准望 - 理知らずの抱擁

さ.よなら絶.望先.生より久遠准×糸色望
絵茶での素敵すぎる絵に文章を付けさせて頂きました。


 暗闇に更に深い闇を落とすその影は、遠目にはひとつに見えたことだろう。実際にはふたりぶんの人いきれ。ふたりぶんの熱。久藤は大切な人を抱えて息を詰めた。糸色はその腕の中で何度と無く声を上げる。呻きと言うにはあまりにも色めいた甘い吐息。悩ましげに眉根を寄せても、その小さな口は拒絶ということをしなかった。終ぞ、しなかったのだ。拒絶されれば。久藤は考える。拒絶されれば、決してこんなにはしなかったろう。けれど糸色は久藤を受け入れている。それどころか潤む目で久藤を見つめ、笑おうとするのだ。快感に流されそうになりながらも、その笑みは酷く官能的なものになる。紅潮した頬、濡れて束になった睫、薄く開かれた唇。自然久藤は糸色を抱く腕に力を込める。強く抱かれるままに挿入の角度は深くなり、連動するように糸色が鼻にかかった声を上げる。声を切欠に二人はもう一度見つめあった。糸色の細い体は震えながら久藤の腕に収まっている。
「可愛いですよ、先生。」
久藤が糸色の顔を覗き込むように言うと、糸色はわざとらしく目を逸らした。
「それは、男性への褒め言葉ではないですね……。」
糸色は自分の外見を気にしてそんな風なことを言った。緩い抽挿のせいで途切れ途切れになった言葉の裏に、拗ねたような色を孕ませて。それが久藤にはどこか可笑しく感じられて、一際強く糸色を突き上げた。不安定な体が撥ねる。
「……っっ!」
「声、我慢しないで下さいよ。」
殺した声だって甘く響いたけれど、思いながら久藤は揶揄するように言った。
「それは、っ、出来かねます。」
糸色がそう言う間にも久藤は緩やかに抽挿を繰り返した。声が途切れる。
「わざと、でしょう。なら、…キスして下さい。」
そう言ったのは糸色だった。意外さに久藤は動きを止めて糸色の顔を見つめる。
「声を出したくないだけです! 私からは届かないので。」
久藤が何も答えないので糸色は慌てて付け足すように言った。縛られた腕を差し上げて見せる。久藤は笑って、糸色の腕の縄目近くに口付けた。そして糸色の体を強く抱き寄せて、唇にも。けれどすぐに唇を離しては言う。
「このままイきますか、先生?」
糸色は答える代わりにわざとらしく目を伏せ、再び顔を上げてはまたじっと久藤を見つめる。久藤は満足げに微笑んでから今度は舌を絡める深い口付けをした。二人が同時に果てるその瞬間まで。







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