金薬 -

モノノ怪よりハイパー×薬売り
ハイパー視点の微エロ


 「どうも……難儀な、お人だ。」
組み敷かれるままにその男は言う。乱れた髪は床に散り、白い肌、何より男の艶かしい雰囲気がわたしの欲情を煽る。そして男は、それすら見越してただ組み敷かれているのだ。
「そういう契約、だ。」
童が。

 −−泣いていたのはいつのことだったか。
童は親をモノノ怪に憑り殺され泣いていた。両親の中を流れていた紅が飛び散って、刹那、童はモノノ怪の姿を見たという。童は親を失った哀しみよりもモノノ怪の悍ましい姿に泣き、喚いた。

 契約を交わした。わたしは童に力を与え、実体を得る。そうして、モノノ怪を斬る快楽を求める旅を始めたのだ。わたしはモノノ怪を糧として生きている。では童は。童がわたしに協力する理由は遂ぞ知り得ぬままだ。また、元来時の流れを持たないわたしはもとより、童はあれから今の姿に成長して、それからは外見に変化が無い。変化が無い侭、幾歳の時を経たかわからない。モノノ怪の精気を浴び続けわたしは童をモノノ怪にしてしまった。

 「童。」
男の頬に手指を添えて、呼び掛ける。
「懐かしい、呼び名ですね。俺はもう子供じゃありませんぜ。疾っくの、昔に。」
男がいつものようにゆっくりゆっくりと話す間に私の指は男の輪郭をなぞる。薄い胸から細い腰から、押せば潰せそうな喉仏、腰骨の頂。敢えて触れない其処を除いて全身隈なく。男の白い肌は朱に染まり、吐く息は桃に香った。男が焦れたのを見てわたしはやっと指を上げた。
「ならば契約をひとつ、先へ進めるか。」
言って首筋を耳元へ向かって舐め上げると男が息を飲むのが判る。
「……、まだ、何か。」
気怠げに目だけを此処へ寄越して男は尋ねる。わたしの活動の為に精を差し出させている現行の契約は余程不服と見えた。だからわざと耳元へ口を寄せる。
“交わり、を。”
瞬間蹴り上げてくる細い足を片手で止めて、押し込めるように更に言った。
“おまえを抱いてわたしは更に力を得る。”
普段感情の希薄な男はこんな時にだけ牙を剥き出して拳を突き出す。男の拳は疾い、が、軽い。
「童め。」
「アンタのそう云う、能々拒否権を残して選ばせるやり方は、嫌いです、よ。」
夫も夫も力ではわたしに敵わないことは男が重々承知している。気晴らしよろしく蹴って殴れば後は睨み上げてくるばかりだった。

「で、如何するんだ。」
噛み締める為に覗く牙を舌先で舐める。
「……。」
男はわたしを一瞥すると、そのまま口付けることを赦すように舌を突き出してきた。


「アンタと俺は、…最早ひとつです、よ。」







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