事後の鈍く痛む腰を反らせて上体だけを起こす。頬杖をついて暗闇の中仄かに見える光とも影とも付かぬ像を見るのは、彼がとても美しいから。どんなに現世が悩ましくとも、眠りの世界にそのような不粋なことはものの数には入らないと示唆するように、眉間から川の字が取り払われた三成殿の寝顔はひたすらに美しかった。それだと言うのに不意に三成殿が顔をしかめ、もぞもぞと身じろぐ。まるで一過性の悪夢の様に一瞬にして苦しげな表情はなりを潜めたが、愛しさから彼の名を呟く声が口をついて出てしまった。静まり返った空間からどんなに小さな物音さえ息を潜めたかに思われたのは一瞬のことで、すぐに三成殿の規則正しい寝息が私の耳へ戻ってきた。果てた後人はよく眠る。私などはいつまでも慣れないせいで行為の後は逆に眠れないことが多いが、今夜は殊更に月が見事であった。秘めやかな楽しみであるところの、彼の顔を心行くまで見詰めるということを致すにはこんな夜は大層都合が良く、思わず手まで伸ばしてしまった。そっと、先程一瞬だけ歪められた眉間の辺りを指先でなぞる。触れるか触れないかのところで、慎重に。
「くすぐったいな。」
ところがどんなに慎重にしたつもりでも、低く張り詰めた声が静寂を切り裂くこととなった。三成殿は目を開けずに、口の端を吊り上げて言った。言っただけだった。驚いた私が手を引っ込めなくてもその手を払うことをしなかっただろうし、その表情は微笑んでいるようにさえ見えた。
「三成殿……。」
少なからずばつが悪くなって、小さな声で言葉尻を濁してしまう。
「俺を呼んだだろう?」
三成殿が目を閉じたまま穏やかに言う。その声が怒気を孕んではいないことに些かの安堵を覚えた。すると横たわったままの彼から手が延びて来て私を布団の中に押し込んだ。
「冷えるだろう。もう少しだけ眠ろう。」
しっかりと抱き込まれ、私は三成殿の腕の中。……嗚呼。
「寒かったのですね、三成殿。」
「幸村は暖かいな。」
またそうしてまどろんで、目が覚めても、お傍におります。