風幸 - あたしか見えない

戦国無双より風魔小太郎×真田幸村。
がっつりエロいです。長いです。目隠しと拘束のSM的要素がありますのでご注意。
時間の流れについて本文の後に解説があります。


 「小太郎どの……?」
呼ぶ声は空に投げ出され返事もないままに霧散していった。彼は普段からよくそうだった。居る筈が無いのに色濃く気配を放ったり、まったく存在を感じさせないで背後で寛いでいたりする。今もしこんな姿のまま放られ、此処に彼が居ないならば私はどうしたらいいのだろう。大きすぎる不安に涙が溢れたがすぐ眼前の布切れに吸収されてしまった。

 いつものように突然訪れた彼は、今日は殊更に機嫌が良いようだった。来て早々私が気付かないように近づき首筋を舐めるなんて芸当を見せたことからもわかる。彼がそんなことをするのは機嫌が良いときだなどと、そんなことまでわかるほどに私は彼に侵食されているのかと思うと可笑しくなった。彼を迎えようと振り返った拍子に視界を塞がれる。
「遊戯を、始めよう……。」
霞のような乾いた声に逢瀬を重ねるうちに感じなくなっていた恐怖が舞い戻ってくる。背筋を声が伝い零れるのに合わせて腰が浮つく。見遣る宛もなく宙を仰いでいると両手も取られ胸の前に纏められてしまった。小太郎殿の手は見た目よりも大きくて、不安で身を捩っても解けはしない。意地悪な恋人が小さく笑った、気がした。
「離して下さい、小太郎殿。」
憶測でしか測れない小太郎殿の居場所に向かって懇願する。すると言葉通り手は、離れていく。けれど私の手と手は纏まったままで何かひも状のもので結ばれているようだ、いつのまに。
「小太郎殿!」
いつになく大きな声を上げて不平を訴える。脳裏のどこか片隅では風魔小太郎とはこういう人間なのだから言っても無駄だとも考えながら。少しの間を置いて傍らに再び体温を感じた。相当近くに居ないと相手が何処に居るのか、何をするのか見えない。ただ声が耳に転がり込んでくる。
「恐いか? 幸村。」
「は……、ぁ、ん!」
背中に体温を感じるのに、声は右耳に転がり込んでくるのに、唐突に前からの刺激を感じて声が途切れる。途切れて出したくも無い類の声に成る。後ろから手が回されているのであれば温度で判る筈だがそれが無い。
「どうした、我は此処に居る。」
後ろから、今度は左の耳に音が入ってくる。身じろいだ気配も見せずに移動をしているのが恐ろしい。今の私にとって確かなのは音と温もりと触れるものだけなのに、彼にかかれば数少ない確かなものすら私を惑わす。不自由な身体と見えない視界が私を追い詰めて思考もままならなくなる。
 「小太郎殿……解いて、下さい。」

 それからかれこれ半々刻ほど経っただろうか、状況はそのままだ。乾いた声も衣擦れの音も彼の人の温もりも無い。其処に小太郎殿が居るのかもわからないし、他の者が音を立てずに居たとしてもわからない。服装に一切の乱れも無いが、そもそも両手を縛られ目隠しをされた異様な姿を放って置かれたくはないし小太郎殿以外の者に見られるのも厭だ。
「私には貴方しか居ないのです……どうか返事をして下さい。どうか傍に居て下さい。」
嗚咽を堪えて何とか言葉にした哀願は我ながらとてつもなく女々しく思えた。不安や孤独が私を狂わせるのだ。時間も半々刻より短いかもしれないし長いかもしれない、或いはまったくと言っていいほど経っていないのかもしれない。今の私には何もわからない。ただ小太郎殿の存在を確認できないのが哀しかった。
「思ったより辛かったようだな……済まない幸村。我は此処に居る。」
焦がれた声と、望んだ温もりと、親しんだ香りが一時に戻ってきた。やつれるほどに消耗した心に充足感が訪れる。遂に眼前の布切れは溢れた涙を吸収しきれずに頬を伝わせた。その伝ったみちを彼の指が辿るのがわかる。何かを言おうと口を開くも何を言えばいいのかわからずそのままになる。不平の一つでも言おうか、だが今は小太郎殿の存在が只管に有難かった、大切だった。涙ながらに息を継ぐその為だけに開け放たれた唇に艶かしい温もりが触れる。舌の動きがすぐに小太郎殿との口付けだと伝えてきた。伝う唾液も自分の舌先で触れる尖った犬歯も間違いなく小太郎殿が其処に居ることを伝えてくれる。後から後から溢れてくる涙と滴る唾液を口付けの終わりに小太郎殿が舐めとってくれた。
「埋め合わせをしてやる。寂しい思いをさせたな。」
いつもは一切の感情を読み取れない小太郎殿の声が今日は優しさを言葉の節々に孕ませているように思えた。涙は引いたが不穏な予感に不安が過ぎる。不安もあるものの其処に小太郎殿が居さえすればそれだけでどんなに有難いことか身に染みた今の心には逆らえず、ただ小さく頷いてみせた。また小太郎殿が笑った気がした。

 「ぁ、小太郎殿……何を?」
結ばれた手を取り立ち上がらせられた。見えないというのは平衡感覚も損なわせるようで立っているのが不安でたまらない。見えない小太郎殿の姿を探して辺りを見渡しても見えなかったがまたもや唐突に私の其処に手が触れる。咄嗟に振り下ろした両の手とぶつかった小太郎殿の手は暖かかった。
「手は下ろさなくていい。」
触れるまま私の両手を胸元に戻す小太郎殿の声に拘束される気がした。言っている言葉に拘束力は無い。無いのが余計に雁字搦めにさせる。そんな力を持った小太郎殿の声にゾクリと官能的な情が駆け上がってきた。胸の前で指を組むと小太郎殿の手が再び下がってくる、其処へ。見えない私の為か単に動きをわからせたいのか掌が腹を辿って、腰骨を押して、足の付け根を指先でくるりと輪を描くようになぞって布の上からその形に触れる。足が震える。
「いい仔だな……未だ足を開けとは言ってないぞ……?」
震える足を踏ん張る為に少し歩幅を広めただけのつもりだったが小太郎殿の言うとおりかもしれない、かする程度にしか触れられていないそこは情けなくも半分ほど勃ち上がっていた。ゆっくりな口調が余計に羞恥を煽るのをわかっていて言っているのだろう。何も言わないでいると聞こえよがしな溜息の後から着物の裾を割ってその手が侵入してくる。褌は簡単に横へと退けられた。遂にその妖艶な指先が触れる。光を遮られた目を上方へ投げ遣っていてもその様がありありと伝わってくる、いつもより敏感になった皮膚。小太郎殿の指の動きはうんざりするほどゆっくりで焦らされている気になってきた。或いはまんまと掌の上で踊らされているのかもしれない。どちらでも良いと思えた。
「ハ、ァ、…っん……。」
イヤラシイとはこういうことを言うのかと思えるほどにゆっくりと妖艶な手つきで追い上げられる。見えない所為で如実に伝わる感触は先刻散々に寂しい思いをしたためか二割増の快楽となって押し寄せてくる。立っていられなくなるほどの大きな快楽、ともすれば受け入れられないほどの。
「んぅ……。」
気がつけば小太郎殿の空いた手は後ろを弄り始めていた。縁をくるくると指でなぞったり下を通って前の方へつつと進みかけては戻る微かな愛撫。それだけで目頭に涙が滲む。痛みや怖気など程遠い途方も無い快感。不意にトントンと入り口を突付かれた。それに合わせてとうとう足の力が抜け膝が折れる、不安定なまま畳に倒れこみそうになる。小太郎殿が抱きとめてくれた。正面から感じる存在。今私の鼻先には鎖帷子の一枚向こうに彼の血の気の無い肌が、胸板があることだろう。
「うぬは気に入ったらしいな、我が用意した遊戯を。」
本日三度目になる笑った気配。今度は位置が近いからかくつくつと喉の奥で笑うのが確実にわかった。そのまま畳に腰を下ろすことを許されればもう力が入らない、立ち上がれない。
「あぁ……、見えないのが、とても……。」
半ばうわ言のように言うと小太郎殿が私の上体を軽くつついた。それだけで転がされるほど快感に絆された身体に少しの羞恥がこみ上げる。
「楽しめ、座興だ。」
乾いた声が一枚膜を隔てて聞こえる。膝を折られ足を開かされても完全に蕩けた身体は思考に抵抗させる気さえ起こさせなかった。シュルと音を立てて褌が取り去られる。熱に浮かされた其処がいきなり外気に晒されて多少萎縮する。
「寒くはないか? 此処がどうなっているか、わかるな?見えなくても。」
言いながら小太郎殿が天を仰ぐ私のそれに触れる。皮膚の延長でしか無いその表面が先走りで潤ってくちゅりと音を立てる、否、小太郎殿がわざとそうしているのだ。潤ったそこは粘膜と同じ性質になる。
「あ…、恥かしい、です。」
身じろいで足を閉じようとしたが小太郎殿は其処に割って入るようにして居るようだった。どちらにしろ力が入らない下半身では待ち望むように竿がピクリと動いたまでだったけれど。クク、と小太郎殿が笑うのが聞こえる。
「幸村、我は此処に居る……。一度果てろ。」
くちゅという水音と一緒に指の圧迫感。小太郎殿がそこを少し強めの力で包むのがわかる。その手が動く、追い上げるように。
「あっ、っ……! やっ…!」
断続的な声が上がる。小太郎殿が手の動きを早めた。足の内側に体温を感じる、より近くに寄り添うように居直したようだ。
「ひぁっ……っ、ああぁあっ、あっ!、……あぅう……。」
足の内側に感じた体温は小太郎殿が私の内腿を噛むために身を屈めたものだった。噛まれた強い刺激が引き金となって私は自らの腹に精を放つ。息を整える間も無く小太郎殿は精液を掬い取って指に絡める動きをする。腹筋の上を指が踊るのさえ絶頂直後の皮膚には快感に感じられた。ずるずるになったであろうその指が後孔へ向かう、つぷと埋まる。
「ん……。」
一本目は入るまでが辛い。滑ってもこじ開けられるのには変わりなく、それでいて入ってしまえば難は無い。
「慣れたものだな。痛みは無いか?」
気遣うように尋ねられても呼吸しか出来ない口では言葉を返せない。替わりに首を縦に動かすがそれもぎこちない動きにしかならなかった。痛みが無いことは伝わったのだろうが小太郎が指を一本入れて其処に座っていることしかわからない。どんな風にしているのか、どんな顔をしているのか、次に何をするのか見えないのは思っていたよりも快感を呼び起こす。
「では……。」
「は、…ぅ。」
二本目が来た。今度は入るのには呼吸を合わせて力を抜いてさえいれば痛みも伴わない。全てが埋まると今度は増えた指の存在感が凄まじく感じられる、鋭い痛みは無い。今日は触覚に支配された身体で二本がそれぞれ違う動きをするのもわかる。どちらの指がどれくらい曲がって、内壁のどの辺りを擦るのか。
「アっ…!」
蠢く指が探していた場所を見つけた。あれほど立たず動かせなかった腰が反射的に跳ねる。小太郎殿はいつもその場所を見つけると暫く何度もそこばかり狙う。お陰でビクリ、ビクリ、跳ねる腰。そのたびに大袈裟な声も上がる。
「今日はえらく締め付けてくる。見えないというのはそんなに善いか、幸村。」
続く強すぎる刺激のせいで答えることもままならない。角度を変え、向きを変え、まるで蹂躙されるようにどうしようもなくなる。漸く止むと同時に指は引き抜かれ、小太郎殿と触れ合う部分が無くなる。シュッと衣擦れの音だけが聞こえてきた。聞こえる音から様子を想像するだけで半勃ちだったそれがまた天を仰ぐ。
「いいな?」
声と同時に菊門に熱を感じた。指でしたように鈴口の部分で縁を数回なぞり、ぐぃと押し入ってくる。
「んんんん、ふ、ぁあ……。」
精一杯力を抜いて受け入れ、息を吐くと中にある存在が主張を新たにする。入ってくるときの排泄感には慣れないが小太郎殿が覆い被さって口付けてくれるとそれも快感に変わる。何とも居えない感触と快感との狭間を往復するようにゆるゆるとそれが動き始めた。カリのすぐ後のくびれた部分、真中辺りの太いところで一層大きく感じて根元までくると尻たぶに小太郎殿の体温を感じる。そしてまた抜く、挿れる、抜く。仕上げに口付けをより濃厚なものにしてねっとりと舌を絡めてちゅ、という音を立てると大きく揺さぶられる。今まで事細かにわかった感触も最早判然としなくなってただ只管快感が追い上げては引き追い詰めては包み込む。声を堪えていられるのもこの辺りまでで、後はただ揺さぶられるままに喘ぐしかないのだ。
「あ、あう、あん、んん、んぁ、あ、あ、ア、あぁんっ!」

 律動の中で目隠しがずれてももう何も見えない。ただ彼の人の赤だけが視界で揺れている。愛しい人の姿を確認すると意識を手放した。





話の途中で出てくる幸村の「半々刻」について。
半々刻=30分、けど実際の時間の流れ的には10分程度です。
10分と書きたかったのですが表記しづらくて泣く泣く断念。
幸村が不安がってそんなに長く感じただけということにします。
そもそも放置プレイは放置する側も忍耐が必要なので
(私の話の中で)幸村のことが大好きな小太郎には30分も耐えられません。


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