一日目は特に何も言われず、部屋を用意されて迎えられた。にも拘わらずも隣の部屋に遊びに行ったら、仕事があるから帰れと言われた。
二日目にも遊びに行ったら、寝具が元就の部屋に用意し直された。
三日目夜中に目が覚めたら、元就と目が合った。本人は認めなかったけれど、俺のことを見ていたに違いない。
俺はあれから元就の居城に居着いている。
四日目の夜、同じように仕事をする元就の後ろで寛いでいると、俺の欠伸一つを切欠にして険しい顔をした元就が仕事の手を止めた。
「貴様は帰らなくていいのか。」
振り返りながら言う、その表情は不機嫌そうだ。多分、元就は机上仕事なんかを指して言ったのだろうが俺は置いてきた野郎共が心配になって、そうだな、と答えた。
「明日発つことにすらぁ。」
出窓から覗く月を見上げて言うと元就はそうか、と答える。言いながら巻物をしゅるしゅると収める。
「仕事はもういいのか?」
「フン。貴様が後ろに居ては捗らんわ。」
言いながら元就が服を脱ぐ。寝間着に着替えようとしているのはわかるが、変な気分になるのは止められない。華奢な肩と薄い胸板、細い腰、小振りな尻、長くしなやかな足。厭でも目が行く。元就はこの三日間こんな風に無頓着な様子で俺に裸を晒した。それも恐らく今日で最後、暫くは見ることもないだろう。そう思うと、この三日は飲み下した良からぬ欲望が込み上げてくる。
――「元就。明日には帰るんだ、いいよな?」
「寝言は寝て言え、止めろ、愚劣な!」
「止めよ!」
元就は細い腕を振り回して再三抵抗を示すが、体格の差を見てもどうにもならないというのは明らかだった。片手だけで元就の両腕を纏め上げてしまえる。黙ったままで下帯をずらして半分勃ち上がりかけているそれに触れた。
「なぁ、反応してんじゃねえか。もしかして強ち厭でもないのか?」
元就の腕を放してもただ呆然と、それ越しに俺の顔を見るだけだった。俺は笑って、それを口に含んだ。
「あ……。」
元就は視線を外さないまま声を漏らした。それは甘い声ではなかったが、元就はキッと此方を睨んだ。
「止めぬか、斯様なこと……!」
半勃ちだったそれに気を良くした俺は元就が言うのを無視して、口の動きを止めないままにその下にひっそりと息づく後孔を指先で軽く突付いた。
「なッ、其処は……!」
「気持ちいいだろ。安心しな、痛くしねえから。」
口元を吊り上げて言う。視線はずっとかち合ったままで、俺は入り口に口付けた。意地っ張りな元就がいくら口を固く閉ざしても時折ぴくりと身体が震える反応は隠せなかった。頑ななその心と裏腹にその入り口は徐々に解れていく。指先が僅かに入るのを確認すると舌を長く突き出して今度は舌先で触れた。中に入り込んだり縁をくるくると舐ったり。舌先ならずより奥まで入るようになると今度は自分の指を舐めた。元就は恨めしそうに此方を見るばかりで何も言わない。しとどに濡れた指を入り口に宛がった。
「う……。」
「痛くはねえだろ。力、抜きな。」
「……。」
難なくとまではいかなくとも指は入った。中指一本を食んで動かす余地もないように思えた。が、それをおしてゆるゆると抜き差しを始めると濡れているお陰でずるずると動く。元就は顔をしかめているが、後ろの方は余裕が出来てきた。もう一本入る、まだ入る。随分解れて、もう入れても激しい痛みは無いだろう。性急にしては捻くれてしまいそうな相手だからこそ、我ながらうんざりするほどじっくりやってきたが、もういいだろう。指を引き抜いて口付けた後、元就の顔を見た。憮然とした表情で此方を見ている。
「入れるのか……、その……。」
唇を尖らせてぼそぼそとのたまう元就が可愛く思えた。
「ああ……、大丈夫だ。」
微笑んで、きゅっと、抱きしめてやった。
出発の朝、どれだけ優しく抱いても初めての身にはキツかったようで、元就は見送りに来てくれなかった。安芸の城を後にし、丘を下る。下るに連れて込み上げる思いを飲み下すように一度だけと決めて振り返ると、遠くからでもよくわかる緑の篭手がゆらゆらと揺れて送り出してくれた。
次会ったとき、きっと元就は怒りそびれた昨夜のことを改めて当り散らすだろう。けれど、それでも構わない。次会うそのときが楽しみでたまらない。